認定医療代理人制度について
Ⅰ ターミナルケアの家族の思いと認定医療代理人
厚生労働省及び各方面から医療代理人の明確化、必要性等が主張されている。高齢化が進み、年間死亡者数が150万人を迎える時代がそこまで来ている。ターミナルケアは他人事ではない、長いと思っている人生があっという間に過ぎ、死を間近に迎える時がくる。ターミナルケアを受け、いよいよ死を迎える時が近くなると、本人も家族も延命治療等の数々の質問を医師、看護師から問われ回答や同意に戸惑う。多くの人が経験しなければならないターミナルケアの辛い場面である。患者本人の意思がはっきりしているときは未だ良いのだが、本人に意識がなく意思表示ができないときは家族が代わって意思を表示しなければならない。しかし、家族にとって「延命治療を止めて下さい」ということは家族の死を自らが決定することになり家族は深い心の傷を負うことがある。親の呼吸器を外すことを決めた子は、親を自分が殺したのではないかと自分を責めるような心理状態になることがある。親の死後にうつ病に罹る子供なども現実にいるのである。このような、特に家族の苦しみを防ぎ患者本人の気持ちを本人に代わって医療機関に伝える代理人こそが認定医療代理人である。
Ⅱ リビングウイルを代理する認定医療代理人
認定医療代理人は、本人の意思が正常なうちに委任を受けて、本人の意識が無いまたは正常ではなくなった時に本人に代わって医療機関及び家族に対してリビングウイル(本人の意思、気持ちを伝える意思表示)を行う者である。認定医療代理人は、場合によっては本人の意思を聞き、確認する認定医療代理人を複数とし、リビングウイル事前委任状に複数人が署名して公証人の確定日付を得ることも必要である。
更に、認定医療代理人は、医療施設、福祉施設との交渉及び医療機関等に対する患者の意思表示を代理することも可能である。医師や看護師から同意を求められたり治療方法を勧められたりしたときに医療代理人が代わって回答や同意をすることも認定医療代理人の職務とする。
Ⅲ 日本事実証明委員会の認定医療代理人制度
医療代理人制度は、国の制度としては存在しない。一般社団法人日本事実証明委員会が認定する医療代理人制度がある。同制度は、同委員会に所属する行政書士、事実証明委員の中で一定の条件の者を医療代理人として認定る制度で、認定後に医療代理人は、日本医療福祉学会に入会し研修する義務が課されている。